FPが解説!ローンのあれこれ!誰もが気になるローンのあれやこれや
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第64回 住宅ローン控除はいつまで受けられる?適用条件や申請方法を解説 (2024年01月15日)

マイホームのイメージ

住宅ローン控除は、住宅ローンの残高の一部を所得税や住民税から控除できる制度です。住宅ローン利用者にとってはありがたい制度ですが、「やり方がよく分からない」「法改正が頻繁にあって難しそうだ」などと苦手意識を持つ人は少なくないでしょう。
だからといって避けていれば、大損するかもしれません。
住宅ローン控除は恒久的な制度ではなく、定期的に内容が見直され入居時期によって適用条件が変わります。
ほんの数か月の違いで住宅ローン控除のメリットが小さくなれば泣いても泣ききれません。そういう意味でも住宅ローン控除の知識が欠かせないわけです。
そこで本記事では、住宅ローン控除の概要や税制改正による控除期間の変化、適用条件、申請方法、控除利用時の注意点を解説します。

住宅ローン控除とは

住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」。個人が新築住宅の建築や中古住宅の取得、リフォームや増改築などを行う際に借り入れた住宅ローンの残高の一部を、所得税や住民税から控除できる制度です。現時点では住宅ローン残高の0.7%分が所得税から控除されます。年末に3,000万円の住宅ローンが残っていれば21万円、5,000万円なら35万円が所得税から控除されます。仮に所得税だけでは控除しきれなかった場合は、住民税から控除できます。控除期間は最大13年です。

ただし、住宅ローンを組んでいれば必ず控除を受けられるとは限りません。住宅ローン控除は住宅ローンの返済期間(償還期間)が10年以上の場合のみ適用されます。

また、住宅の種類や入居時期によっても控除額は変わります。現状の住宅ローン控除は2025年12月31日までに入居した住宅を対象にした制度ですが、2022年度に行われた税制改正によって一部の住宅は適用される条件が変わりました。環境への配慮が重視されるようになり、低炭素、省エネなど、高性能住宅の条件を満たさない一般の新築住宅(その他の住宅)で控除を受けられるのは、2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅、または2024年6月30日までに建築された住宅で、控除期間が最大10年まで短縮される点も注意が必要です。

2022年度税制改正による住宅ローン控除のおもな変更点4つ

住宅ローン控除を含む税金に関する制度(税制)は、毎年度行われる税制改正によってルールが見直されています。住宅ローン控除は2022年度の税制改正で一部のルールが変更となりました。

1.利用対象期間が2025年までに延長

住宅ローン控除の利用対象期間が「2021年まで」から「2025年まで」に延長されることとなりました。また省エネ住宅に該当する条件を満たした新築住宅等を対象に、最大控除期間を10年から13年へ延長しています。

大きな背景には、カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量が実質ゼロ)の促進があります。環境問題が深刻になり、今後、ますます環境への配慮が必要になります。住宅に関しても、環境への負荷が低い高性能住宅に切り替えていく必要があります。

住宅ローン控除は、家を購入する大きな動機になるので、高性能住宅だけを控除の対象にして、省エネ住宅への誘導を図ろうというわけです。

もちろん個人消費が冷え込む経済状況を踏まえた措置という背景もあります。

2.借入限度額が住宅の性能や種類によって変動するようになった

2022年度の税制改正以降、住宅の性能や種類によって住宅ローン控除が適用される借入金額の上限が変動するようになりました。原則として省エネ性能が高い住宅ほど借入限度額が高く設定されています。

省エネ性能が高い住宅の種類は、「認定住宅(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅)」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」の3つ。いずれの基準も満たさない住宅は「その他の住宅」として扱われます。

住宅ローン控除適用期間が13年に延長されたのは、新築住宅・買取再販住宅のうち省エネ基準を満たした住宅のみです。既存住宅および省エネ基準を満たさない新築住宅等の控除適用期間は最大10年のまま据え置きされています。

3.控除率の引き下げ

2022年度の税制改正によって、住宅ローン控除の控除率が1.0%から0.7%へと引き下げられました。この引き下げにより控除額が3分の2程度になってしまいましたが、この背景には低金利が続く変動金利型の住宅ローンとの兼ね合いがあるといわれています。

現在、メガバンク等の主要金融機関における変動金利型住宅ローンの適用金利は0.5%以下で推移しています。住宅ローン控除の本来の趣旨は、高額な利息の支払いを助けることでした。しかし、現在は、超低金利のため、金利に各種手数料を加えても、住宅ローン控除による控除額を下回ってしまい、住宅ローンの利息以上に控除を受けられる"逆ザヤ"の状態となっていました。

そのため目的と現状の差を是正する必要があると判断され、控除率が引き下げられたと考えられます。

4.所得制限の引き下げ

2022年度の税制改正では、住宅ローン控除適用対象者の所得制限の引き下げも行われました。2021年度までは住宅ローン利用者の年間合計所得が3,000万円以下である場合に住宅ローン控除が利用できましたが、税制改正により2,000万円以下にまで引き下げられています。

住宅ローン控除の借入限度額や控除額はどのくらい?

解説する女性

住宅ローンの借入限度額は、住宅の種類や入居した時期によって細分化されています。主に住宅の環境性能が基準となっており、炭素排出量が少ない住宅ほど借入限度額は高く設定されています。
住宅の種類・区分ごとの住宅ローンの借入限度額は以下の通りです。

新築住宅および買取再販住宅
住宅区分 居住開始年
2022(令和4)年 ~2023(令和5)年 2024(令和6)年 ~2025(令和7)年
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
5,000万円【13年】 4,500万円【13年】
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円【13年】 3,500万円【13年】
省エネ基準適合住宅 4,000万円【13年】 3,000万円【13年】
その他の住宅 3,000万円【13年】 2,000万円【10年】※

※2023年12月31日までに建築確認を受けたもの、または2024年6月30日までに建築されたもの
※特例居住用家屋に該当する場合は2023年12月31日までに建築確認を受けたもの

中古住宅
住宅区分 居住開始年
2022(令和4)年~2023(令和5)年 2024(令和6)年~2025(令和7)年
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
3,000万円【10年】
ZEH水準省エネ住宅 3,000万円【10年】
省エネ基準適合住宅 3,000万円【10年】
その他の住宅 2,000万円【10年】

上記に該当する住宅ローン控除率は一律で年末時点での住宅ローン残高の0.7%です。ただし、2021(令和3)年以前に住宅ローン控除の適用を受け始め、現在も対象期間が継続している場合は、控除率は改正前の1.0%が適用されます。

実際に、住宅ローン控除はどの程度の金額が控除されるのでしょうか。新築住宅および買取再販住宅を例に算出した結果が以下の表です。

2022(令和4)年~2023(令和5)年に入居
住宅区分 借入限度額 控除率 最大控除期間 最大控除額(単年) 最大控除額(合計)
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
5,000万円 0.7% 13年 35万円 455万円
ZEH水準省エネ住宅 4,500万円 31.5万円 409.5万円
省エネ基準適合住宅 4,000万円 28万円 364万円
その他の住宅 3,000万円 21万円 273万円
2024(令和6)年~2025(令和7)年に入居
住宅区分 借入限度額 控除率 最大控除期間 最大控除額 (単年) 最大控除額 (合計)
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
4,500万円 0.7% 13年 31.5万円 409.5万円
ZEH水準省エネ住宅 3,500万円 24.5万円 318.5万円
省エネ基準適合住宅 3,000万円 21万円 273万円
その他の住宅 2,000万円 10年 14万円 140万円

なお、上記の最大控除額(合計)は、最大控除期間中は常に借入限度額以上のローン残高が残っている前提で計算されています。住宅ローンを返済した結果、年末のローン残高が借入限度額を下回った場合には、実際の控除額は上記よりも減額されます。

また2023年12月、新たに2024年度の税制改正大綱が発表されました。住宅ローン減税に関しては、少子化対策の一環として子育て世帯や若者夫婦世帯に手厚い内容にするため、借入限度額について、子育て世帯・若者夫婦世帯が2024年に入居する場合には、2022年~2023年入居の場合の水準が維持されます。

住宅ローン控除の適用条件

住宅ローン控除は、住宅区分のほかにも以下の適用条件が設定されています。

・自らが居住する
 ※別荘や賃貸用住宅は対象外
・合計所得が2,000万円以下である
・床面積が50平方メートル以上である
 ※合計所得が1,000万円以下であれば40平方メートル以上
・住宅ローンの残り返済期間が10年以上ある
・自営業などの場合、床面積の半分以上を居住目的で利用

なお、上記条件に加えて購入する住宅の種類によって、一部適用条件が異なる場合があります。

住宅別・控除を受けるための適用条件

住宅ローン控除の適用条件は前項の項目に加え、新築・買取再販・中古・増築によってそれぞれ異なる条件が設けられています。

新築住宅

新築住宅において住宅ローン控除を適用するには、上記に加えて以下の条件を満たす必要があります。

・契約者本人が住宅引渡し日または工事完了日から6カ月以内に入居している
・適用を受ける年の12月31日まで居住している
・住居の譲渡に関する各種特例を適用していない

住宅ローン控除は、あくまで住宅購入に対する減税措置です。そのため、申請者本人が住んでいない場合には住宅ローン控除は適用できません。ただし、契約者本人が単身赴任で住居から離れることになっても、家族が6カ月以内に入居し12月31日まで住み続けるなら、その年の住宅ローン控除は適用されます。

また、原則として住宅ローン控除は、住宅の譲渡に関する他の特例との併用ができません。併用不可の特例には、住宅の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「3,000万円特例」や、10年を超えて所有する住居を譲渡した際の税額を軽減する「長期譲渡所得の課税特例」などが該当します。

住んでいた住居の売却時にこれらの各種特例を適用させた日が、居住年およびその前2年、居住年の翌年以後3年以内に含まれていると、新築購入費用に対する住宅ローン控除の適用は受けられなくなります。

買取再販住宅

買取再販住宅とは、宅地建物取引業者がリフォームやリノベーションを行ったうえで販売する中古住宅です。買取再販住宅に住宅ローン控除を適用させるためには、新築住宅への条件に加えて以下の条件を満たす必要があります。

・宅地建物取引業者から買取再販住宅を購入している
・上記業者による住宅取得から再販までの期間が2年以内に行われている
・上記業者から取得した時点で新築から10年以上経過している
・建築後に使用されたことがある住宅である
・リフォーム・リノベーション前の住宅が1982(昭和57)年1月1日以降に建築された、または一定の要件に従い耐震住宅であると証明されている
・リフォーム・リノベーションの工事費が物件価格の2割(その金額が300万円を超える場合には300万円)以上を占める
・大規模修繕や耐震基準に適合するために必要な工事が行われている

買取再販住宅は元々築年数が長い中古住宅ですが、リフォーム・リノベーションにより新築住宅と同等の性能を有すると認められた住宅です。借入限度額は新築住宅と同程度に設定されていますが、一方で適用条件が細かく設けられているため、購入前の十分な確認が必要です。

買取再販住宅を購入する際には、販売業者に住宅ローン控除の適用条件を満たしているのか、十分な説明を求めるとよいでしょう。

中古住宅

中古住宅に住宅ローン控除を適用させるためには、新築住宅への条件に加えて以下の条件を満たす必要があります。

・建築後に使用されたことがある住宅である
・1982(昭和57)年1月1日以降に建築された建物である、または一定の要件に従い耐震住宅であると証明されている

かつては中古住宅に住宅ローン控除を適用させる要件に、建築からの築年数が含まれていたため、古くても「性能が高い住宅」を購入しても住宅ローン控除を受けられないという状態が続いていました。

しかし2022年度の税制改正により、「新耐震基準への適合が義務づけられた1982年以降に建築された建物」へと基準が統一されたことで、より多くの中古住宅に住宅ローン控除が適用されるようになっています。

また、1981年以前に建築された住居であっても、耐震基準適合証明書および既存住宅性能評価書を提出することで住宅ローン控除を受けることが可能です。ただし、1981年以前の建物の多くは現在の耐震基準を満たす構造になっていないため、現実的には非常に困難であるといえるでしょう。

リフォーム・増改築

リフォームや増改築にかかる費用も住宅ローン控除の対象です。リフォーム・増改築に住宅ローン控除を適用させるためには、新築・中古住宅購入時の条件に加えて以下の条件を満たす必要があります。

・契約者本人が所有・居住する住宅のリフォーム・増改築のための費用である
・工事費は100万円以上かつ5割以上を居住を目的とした部分の改修に充てている
・工事日から6カ月以内に入居し、12月31日まで居住している

リフォーム・増改築に住宅ローン控除を適用させるためには、原則として契約者本人が所有し居住している必要があります。単身赴任のようなケースは例外として居住していなくても認められますが、両親が住む実家のリフォームに関する費用を肩代わりする場合などは、住宅ローン控除の要件を満たしません。

住宅ローン控除の適用対象となる工事は、居室や調理室、バス・トイレ・洗面所など、広いエリアが対象となっています。ただし、自宅の大部分を修繕するような大規模工事の場合を除き、一定の省エネ、バリアフリー、耐震を目的としたリフォームであることが必要な点には注意が必要です。また、リフォーム・増改築の住宅ローン控除は、住宅購入時よりも短い最大10年である点には留意しておきましょう。

申請前に注意!住宅ローン控除の対象にならないケース

住宅ローン控除は、誰でも必ず受けられるものではありません。住宅ローン控除を利用する際には、次に紹介する条件に留意したうえで申請を行いましょう。

認められた金融機関等以外からの借り入れの場合

住宅ローン控除は、金融機関や住宅資金向け貸金業者、指定基金のローンなど、金融機関からの借入のみが対象になります。

親族や知人から借用書を作成して借り入れたとしても、金融機関からの借入ではないため、住宅ローン控除の対象にはなりません。

居住要件を満たさない場合

住宅ローン控除が適用されるのは、原則として契約者が居住している建物の購入費用を借り入れた住宅ローンのみです。「新築・取得から6カ月以内に住み始めている」「控除を受ける年の12月31日時点で継続して居住している」という2つの要件を満たさなければ、住宅ローン控除の対象にはなりません。

仮に2つ以上の住居を保有し、いずれも住宅ローンを組んで新築・取得していたとしても、住宅ローン控除を適用できるのは要件を満たす1契約分のみです。

「その他の住宅」に該当する場合

2022年度の税制改正により、所定の省エネ基準を満たさない「その他の住宅」に該当する住宅への住宅ローン控除適用条件が厳しく制限されました。

2024年1月以降に建築確認を受けた、または2024年7月以降に建築された新築住宅は、原則として住宅ローン控除の対象外です。これらの住宅に住宅ローン控除を適用するには、省エネ基準に適合していることを証明する「建築住宅性能評価書」「住宅省エネルギー性能証明書」を申請時に提出する必要があります。

建築予定の物件が「その他の住宅」に該当するようなら、上記の書類で省エネ性能を証明可能であるか、販売業者に確認しておきましょう。

土地のみを購入した場合

住宅ローン控除は、居住する建物に対する税軽減の制度です。住宅用であっても、土地のみを購入するためのローンには住宅ローン控除は適用できません。土地購入にローンを利用し、自己資金や親族などからの借入金で家屋を建築したとしても、住宅ローン控除の適用対象外となります。

例外として、土地の取得から2年以内に住宅ローンを活用して住宅を建築、もしくは一定期間以内に建物を建てる条件が付与されている「建築条件付き土地」を購入して3カ月以内に建築契約を締結した場合などには、住宅ローン控除の対象として認められます。

住宅ローン控除を受けるにはいつまでに申請すべき?必要書類や申請方法

住宅ローン控除の申請書

住宅ローン控除を受けるためには、確定申告を行う必要があります。これは自営業者に限らず、初年度は会社員等の被雇用者も確定申告での手続きが必要です。ここでは申請の際に必要な手順や書類についてご紹介します。

必要書類

住宅ローン控除を申請するためには確定申告をする必要がありますが、1年目と2年目以降で必要な書類が異なります。

1年目の申請で必要な書類

1年目の申請時には、以下の書類の用意が必要です。

・確定申告書(被雇用者は源泉徴収票)
・住民票の写し
・(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
・住宅ローンの年末残高証明書
・登記事項証明書
・請負契約もしくは売買契約書(写し)
・耐震基準適合証明書 ※中古住宅など
・認定長期優良住宅の認定通知書 ※優良住宅など
2年目以降の申請で必要な書類

2年目以降の申請時には、以下の書類の用意が必要です。

・住宅ローンの年末残高証明書
・給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼計算明細書 ※被雇用者
・(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書 ※自営業者

1年目の申請方法

1年目の申請は、被雇用者・自営業者共に確定申告を行う必要があります。確定申告の申請期間は基本的に毎年2月中旬~3月中旬です。自営業者は毎年のことですが、会社員は普段はあまり意識する必要がない手続きであるため、申請期間を忘れないように注意しましょう。

確定申告の手続きは、居住地域の税務署の窓口だけでなく、郵送やインターネット上での手続きも可能です。直接税務署まで出向く必要がない手続き方法は便利ですが、手続きに不安があるようなら、税務署員に相談しながら申請することをおすすめします。

2年目以降の申請方法

自営業者の2年目以降は、1年目と同じく確定申告で申請する必要がありますが、会社員の2年目以降は年末調整で申請できるようになるため、雇用先に上記書類を提出するだけで手続きが済むようになります。

申請期限を過ぎてしまった場合

会社員が会社が定めた申請期限までに住宅ローン控除の手続きをし忘れてしまった場合は、まずは会社に相談してみるとよいでしょう。会社が設定する期限は、社内で手続きを行う関係で、確定申告の期日よりも前に設定されます。会社が確定申告を終える前に申請できれば、社内の修正手続きのみで済むかもしれません。

すでに会社が確定申告の手続きを終えてしまった場合や、確定申告の期日を過ぎてしまった場合には、税務署へ確定申告の修正申告を行いましょう。確定申告の期限である3月15日以前なら「訂正申告」、3月15日以降なら「更正の請求」または「修正申告」の手続きが必要です。

確定申告は、期限を過ぎても5年以内なら遡って申告内容を修正できるというルールがあります。これは自営業者・会社員を問わないルールですので、直近5年以内に手続きが漏れてしまった会社員であっても、過去に受けられるはずだった住宅ローン控除分の所得税・住民税の還付を受けられます。

住宅ローン控除を利用する際の3つの注意点

住宅ローン控除は、住宅ローン利用者にとって非常にありがたい制度です。一方で適用の条件は細かく定められているため、適切に適用させるためにはいくつかのポイントに注意する必要があります。ここでは住宅ローン控除を利用するために注意したいポイントを3つに絞ってご紹介します。

住宅ローンを借り換えた場合の控除

住宅ローンは、ローン商品を提供する金融機関やサービスによって金利が異なります。そのため現在よりも利率の低いローンへの借り換えは多く行われています。

住宅ローンは原則として住宅の取得・増改築のための借入金に位置づけられています。そのため、借り換えにともないローンの目的が「借入金の返済」へ変わることに対し、国税庁は「原則として住宅借入金等特別控除の対象とはならない」という考えを示しています。

一方で、国税庁は以下の要件を条件に、借り換え後に住宅ローン控除の適用を認めています。

・新しい住宅ローンが借り換え前の住宅ローンの返済のためにあると明らかである
・新しい住宅ローンの借入期間が10年以上など、住宅ローン控除の適用条件を満たしている

借り換えをきっかけに住宅ローン控除の要件から外れないよう、要件を満たすローン契約を結びましょう。

床面積はパンフレットやカタログのみで確認しないこと

パンフレットやカタログに記載された床面積を参考にすると、住宅ローン控除が適用されない場合があります。

住宅ローン控除の要件のひとつに「床面積が50平方メートル以上であること」があります。住宅ローン控除の要件となる面積は、原則として登記簿上に記載された数値です。登記簿では壁の内側の面積である「内法面積」を採用していますが、住宅パンフレットなどでは一般的に壁の中心から測定を始める「壁芯面積」を採用しているため、登記簿上の面積よりもわずかに広く表記されます。

そのため、パンフレットを参考に物件を選んだ場合、50平方メートルを割ってしまい住宅ローン控除が適用されないケースが考えられます。住宅ローン控除の利用を前提に物件を購入する際には、事前に登記簿に記載された面積を確認しておきましょう。

残高の0.7%全額を控除できない場合がある

住宅ローン控除は、年末時点での住宅ローン残額の最大0.7%を所得税・住民税から控除する制度です。まず所得税から控除され、残額は以下の条件のうち少ない額を住民税から控除します。

  • 住宅ローン控除可能額のうち所得税から控除しきれなかった金額
  • 所得税の課税所得金額の5% (上限97,500円)

そのため、その年の所得が低く所得税・住民税の納税額が住宅ローン控除額を下回る場合、最大控除率である0.7%は控除できません。差額は翌年以降に繰り越しできないため、その年の控除率は0.7%を下回ります。

また、ふるさと納税などの税額控除と併用する際にも注意が必要です。住宅ローン控除とふるさと納税は併用可能な制度であり、確定申告ではふるさと納税による控除が優先されます。ふるさと納税の控除額によっては住宅ローン控除が適用される分を削ってしまい、0.7%分の控除ができなくなるかもしれません。

なお、会社員が2年目以降に住宅ローン控除を適用する場合、ふるさと納税は「ワンストップ特例制度」を活用してもよいでしょう。ワンストップ特例制度は寄付額を住民税から控除するための確定申告が不要になる制度です。年末調整で住宅ローン控除ができるようになった会社員にとって非常に相性がいい制度であるといえます。

ただし、住宅ローン控除を適用させる1年目には確定申告が必要ですので、ワンストップ特例制度を使えない点には注意しましょう。

まとめ

住宅ローンの年末残額の0.7%を一定期間税金から控除する住宅ローン控除は、住宅ローン利用者にとって非常にありがたい制度です。一方で住宅ローン利用者全員が必ず利用できる制度ではなく、適用するためにはいくつかの条件を満たす必要があります。

また、住居区分や新築・中古によって控除額や控除期間が異なりますので、マイホームの計画を立てる際には、住宅ローン控除の制度を事前に理解しておくようにしましょう。

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文/手塚 裕之