住宅の購入は非常に大きな買い物であるため、住宅ローンを利用するのが一般的です。住宅ローンは長い期間をかけて返済していくローンなので、利用する場合は無理なく返したいと考える方が多いのではないでしょうか。
住宅ローンを利用する際には、年収から住宅ローンの借入金額の目安を考えると無理のない返済計画を立てられます。
この記事では、年収に対する住宅ローンの目安や、年収別のシミュレーションを解説。また、住宅ローンを無理なく返済するためのポイントもわかりやすく紹介するので、住宅を安心して購入するための参考にしてください。
年収に対する住宅ローン借入金額の目安は?
住宅ローンを利用する際には、年収倍率をチェックしておきましょう。年収倍率とは、住宅を購入するために必要な資金を世帯年収で割った数値です。
住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査」に、これまで住宅ローンを利用した人がどれくらいの金額の住宅を購入し、どれくらいの年収倍率だったのかがわかるデータがあります。
下記の表は、住宅金融支援機構の「2022年度フラット35利用者調査」のデータを参考に、住宅のタイプ別の所要資金・年収倍率の平均値をまとめたものです。 なお、所要資金は、土地付注文住宅・注文住宅は建設費と土地取得費、それ以外は購入価額です。
住宅のタイプ | 所要資金 | 年収倍率 |
---|---|---|
土地付注文住宅 | 4,694万円 | 7.7倍 |
注文住宅 | 3,717万円 | 6.9倍 |
建売住宅 | 3,719万円 | 6.9倍 |
中古戸建 | 2,704万円 | 5.7倍 |
新築マンション | 4,848万円 | 7.2倍 |
中古マンション | 3,157万円 | 5.9倍 |
出典:住宅金融支援機構「2022年度フラット35利用者調査」
住宅金融支援機構の「2022年度フラット35利用者調査」のデータによると、住宅ローンの借入可能額は年収の5倍~8倍程度が目安であるといえます。ただし、「年収の5倍~8倍」という目安はあくまでも日本全体での平均値です。年収倍率は、地域によっても異なる点に注意してください。
自己資金(頭金)の割合
ここでの自己資金とは、所要資金(土地付注文住宅・注文住宅は建設費と土地取得費、それ以外は購入価額)から手持ちの現金で支払うお金です。
以下に、住宅金融支援機構の「2022年度フラット35利用者調査」で公表されている、住宅のタイプ別の自己資金(手持金)の平均値を挙げます。
住宅のタイプ | 所要資金 | 自己資金(所要資金における割合) |
---|---|---|
土地付き注文住宅 | 4,694万円 | 449.6万円(9.6%) |
注文住宅 | 3,717万円 | 641.2万円(17.3%) |
建売住宅 | 3,719万円 | 317.7万円(8.5%) |
中古戸建 | 2,704万円 | 274.3万円(10.1%) |
新築マンション | 4,848万円 | 987.8万円(20.4%) |
中古マンション | 3,157万円 | 528.9万円(16.8%) |
出典:住宅金融支援機構「2022年度集計表」
上記の情報から、全国平均では住宅購入の所要資金のうち約8%~21%を自己資金で支払っていることがわかります。
住宅購入にはさまざまな費用がかかる
住宅を購入する際には、さまざまな費用がかかります。住宅のタイプにより、以下のような費用が必要です。
- 購入時諸費用(不動産登記費用、税金(不動産取得税、印紙税、固定資産税など)、仲介手数料、修繕積立金など)
- 住宅ローン諸費用(事務手数料、保証料、団信保険料、印紙税、登記費用など)
- 火災保険料・地震保険料
- 引越し費用や家具の購入費用など
いずれも決して小さくはない金額のため、住宅購入の計画にはこれらの費用も考慮しておくことが大事です。
住宅ローンと年収のわかりやすい目安は「返済負担率」
住宅ローンと年収のバランスを考えるうえで、年収倍率よりもさらに現実的な目安といえるのが返済負担率です。返済負担率とは、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合を指します。
一般的な返済負担率を知る際に参考になるのが、住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2023年4月調査)」です。
調査によると、「変動型」「固定期間選択型」「全期間固定型」のいずれの金利タイプでも、返済負担率15%超~20%以内の利用割合が最も高くなっています。
一般的に、返済負担率の安全な割合は25%以下とされています。年間の住宅ローン返済額が年収の25%以下であれば、無理のない返済を継続できるといえるでしょう。
参考:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査(2023年4月調査)」
なお、住宅金融支援機構の【フラット35】の申込要件では、すべての借り入れを含む返済負担率を以下の基準としています。
年収 | 400万円未満 | 400万円以上 |
---|---|---|
基準 | 30%以下 | 35%以下 |
年収別|住宅ローンの借入可能額シミュレーション
返済負担率によってどれくらい借りられるのか、また返済額はどれくらいになるのかシミュレーションしたものを、年収別に紹介します。
なお、シミュレーションの前提条件は以下のとおりです。
- 返済負担率20%・25%・30%で3パターン計算
- 返済期間は35年
- ボーナス返済はなし
- 金利タイプは全期間固定型
- 金利は1.80%
- 返済方式は元利均等返済
年収300万円
返済負担率 | 借入可能額 | 毎月の返済額 | 年間の返済額 |
20% | ¥15,570,000 | ¥50,000 | ¥600,000 |
---|---|---|---|
25% | ¥19,460,000 | ¥62,500 | ¥750,000 |
30% | ¥23,350,000 | ¥75,000 | ¥900,000 |
年収400万円
返済負担率 | 借入可能額 | 毎月の返済額 | 年間の返済額 |
---|---|---|---|
20% | ¥20,760,000 | ¥66,667 | ¥800,000 |
25% | ¥25,950,000 | ¥83,333 | ¥1,000,000 |
30% | ¥31,140,000 | ¥100,000 | ¥1,200,000 |
年収500万円
返済負担率 | 借入可能額 | 毎月の返済額 | 年間の返済額 |
---|---|---|---|
20% | ¥25,950,000 | ¥83,333 | ¥1,000,000 |
25% | ¥32,440,000 | ¥104,167 | ¥1,250,000 |
30% | ¥38,930,000 | ¥125,000 | ¥1,500,000 |
年収600万円
返済負担率 | 借入可能額 | 毎月の返済額 | 年間の返済額 |
---|---|---|---|
20% | ¥31,140,000 | ¥100,000 | ¥1,200,000 |
25% | ¥38,930,000 | ¥125,000 | ¥1,500,000 |
30% | ¥46,710,000 | ¥150,000 | ¥1,800,000 |
年収700万円
返済負担率 | 借入可能額 | 毎月の返済額 | 年間の返済額 |
---|---|---|---|
20% | ¥36,330,000 | ¥116,667 | ¥1,400,000 |
25% | ¥45,410,000 | ¥145,833 | ¥1,750,000 |
30% | ¥54,500,000 | ¥175,000 | ¥2,100,000 |
シミュレーターを利用し試算しておりますが、実際の審査では異なる結果となる可能性があります。あくまで目安として参考にしてください。
住宅ローンを無理なく返済するポイント
住宅ローンは借入金額が比較的大きく、返済期間が長いことが一般的です。そのため、生活に支障をきたさないよう、住宅ローンと年収のバランスの取れた借入金額の設定が欠かせません。
ここでは、住宅ローンを無理なく返済するために押さえておきたいポイントを4つ紹介します。
額面ではなく手取りで毎月の返済額を考える
住宅ローンを融資する金融機関は、年収の「額面」を使って借入可能額を算出します。
しかし、住宅ローンの返済に実際に使用できるのは、額面から社会保険料や住民税、所得税が引かれた「手取り」です。会社員ではなく自営業・フリーランスの場合は、売上から保険料や税金、経費を差し引いた金額が手取りとなります。
手取りは年収や扶養している人数に応じてさまざまですが、おおよそ額面の70%~80%程度の金額となるのが一般的です。返済に使える実際の資金は、額面より20%~30%ほど少なくなるため、住宅ローンの毎月の返済額は手取りで考える必要があります。
返済期間を考える
住宅ローンを利用する際には、借入金額だけでなく返済期間についても十分に考える必要があります。
住宅ローンの返済期間が長ければ長いほど、毎月の返済額を少なくすることが可能です。しかし、返済期間を長く設定した場合、定年退職後も返済が継続する可能性があります。
一方、返済期間を短くすると支払う利息を軽減できるメリットがあり、返済総額の点で考えると得です。しかし、返済期間が短いと毎月の返済額が大きくなるため、返済負担率は上がります。
仕事や家庭の状況をよく考えながら、返済計画を立てましょう。
収入や支出の変化を考慮する
住宅ローンの返済中に、収入や支出が変化するケースは少なくありません。
例えば、転職や退職、産休・育休の取得によって収入が減ることもあるでしょう。また、子どもの進学や親の介護のために支出が増える場合も考えられます。そのため、さまざまなライフイベントによって生じる収入や支出の変化も考慮に入れながら、住宅ローンの借入金額を決めることが大切です。
まずは、結婚・出産・進学・定年退職といった大きなライフイベントから洗い出し、ゆとりある住宅ローン借入金額を考えてみてください。
自己資金を増やす
住宅購入時の支払総額は、自己資金と住宅ローンを合わせた金額です。支払総額のうち自己資金を増やした場合、住宅ローンの借入金額は減少します。
借入金額が減ればそれだけ毎月の返済額も少なくなるため、無理のない返済が可能です。利息も軽減できるため、自己資金を増やすメリットは大きいといえるでしょう。
ただし、購入時にまとまった金額を捻出すると、貯蓄が大幅に減ってしまうこともあります。貯蓄額によっては生活に不安を感じる可能性もあるので、自己資金の金額は貯蓄とのバランスを考えて決めてください。
まとめ
住宅ローンの借入金額は、年収の5倍~8倍程度を目安とするのが一般的です。また、より現実的な目安として返済負担率を考慮することも欠かせません。返済負担率を25%以下に設定することで、住宅ローンを無理なく返済できるラインだと言われています。
ただし、長い人生のなかで収入や支出に変化が生じるタイミングは複数あるため、ライフイベントを考慮しながらゆとりある返済計画を立てましょう。
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文/赤上 直紀