複数の金融機関でローンを利用していると、それぞれのローンの返済が必要となり、毎月の返済負担が大きいと感じる方もいるかもしれません。
しかし、おまとめローンを利用することで、現在利用している借入残高を1つの金融機関にまとめて、毎月の返済額の負担を減らせる可能性があります。
そのため、事前におまとめローンの審査基準や審査に落ちてしまう理由を知っておくことは重要です。
今回は、おまとめローンの審査基準や審査に落ちる理由について解説します。併せて、おまとめローンの必要書類や審査の流れ、商品を選ぶときのポイントや利用の注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
おまとめローンとは
まずは、おまとめローンの基礎知識について解説します。複数社の借り入れを1本化できる
おまとめローンとは、複数社からの借り入れを1本化する商品です。借り入れを1本化することにより、毎月の返済回数を1回にしたり、返済額を減らしたりするメリットが期待できます。
おまとめローンの審査に通過すると、複数社から借り入れをしている合計額の融資を受けられます。
おまとめローンで受けた融資を利用して、複数社の借り入れをすべて返済し、1本化した借入残高を返済していくのです。
おまとめローンの種類
おまとめローンの代表的なものとして、以下の3種類があります。
- 銀行のおまとめローン
- 消費者金融のおまとめ専用ローン
- 銀行カードローン
それぞれ、どういったローンか見ていきましょう。
1.銀行のおまとめローン
銀行のおまとめローンには、おまとめ専用のローンと、使い道が自由で他社のローン借り換えを認めているフリーローンがあります。どちらも毎月決まった一定金額を計画的に返済することが可能です。
2.消費者金融のおまとめ専用ローン
消費者金融では、貸金業法に基づくおまとめ専用ローンがあり、既存の借入金額が年収の1/3を超える場合でも申込みができる場合もあります。
申込みからの審査回答もスピーディーで比較的手続きが簡単なことが特徴です。
3.銀行カードローン
銀行カードローンにもおまとめに利用可能な商品があります。一般的に銀行カードローンは、消費者金融などに比べると低金利といわれています。
ただし、毎月の返済額が借入残高に応じて変化(スライド)する「残高スライド元利定額リボルビング方式」を採用していることが多い傾向です。
そのため、毎月一定額を確実に返済するおまとめローンよりも、返済期間が長くなり返済総額も増えることが一般的です。
おまとめローンの審査基準とは
上述したように、おまとめローンは、複数の金融機関の借入残高を1社にまとめるローンのことです。ただし、ローンを組むには審査が必要になります。おまとめローンの審査基準や審査に比較的通りやすい人の特徴を見ていきましょう。
おまとめローンの審査基準
ローンの審査をするうえで重要なポイントは「間違いなく返済できるかどうか」です。一般的な審査の基準となる項目を挙げてみましょう。
基本情報:年齢・住所・電話番号など
本人確認書類との一致や、電話番号に間違いはないかなどの基本的な情報です。
返済能力:勤務先・雇用形態・勤続年数・年収など
安定した収入状況を判断するうえで、重要な属性情報になります。
生活情報:家族構成・居住形態など
既婚未婚、子供の有無、持ち家の有無など、家族構成や財産についても重要な情報です。
信用情報:他社借入件数・借入総額・滞納の有無・金融事故(債務整理歴など)
返済実績などローンを審査するうえで特に重要といえるのが、この信用情報となります。
おまとめローンの審査に比較的通りやすい人の特徴
一般的な目安ではありますが、審査に比較的通りやすい人の特徴も確認していきましょう。
1.安定した収入のある人(勤続年数)
多くの金融機関では、「安定した収入」「継続した収入」がある人を申込み条件にしています。なかには「給与所得者の方」「年金受給者を除く」などを条件とする金融機関もあるでしょう。
また、勤続年数は長いに越したことはありません。一般的な目安ではありますが、同じ会社に1年以上の勤務歴はほしいものです。
2.年収200万円以上
「年収に比べて無理のない返済ができるかどうか」が重要な判断基準であり、借入金額にもよりますが、年収200万円以上というのは一般的な目安ともいえます。
おまとめローンの審査に通らない?落ちてしまう理由とは
いざおまとめローンへ申込みをしようとしても、実際に審査に通るか不安を感じる方もいるかもしれません。ここでは、「審査に落ちてしまう理由」について見ていきます。
おまとめローンの審査が厳しい理由
審査が厳しい理由の一つに、おまとめローンはすでに借り入れのある利用者が対象になる商品であることが挙げられます。
年収に対する年間返済額の割合を「返済負担率」といい、年収や借入金額にもよりますが20%~40%以下が一般的な目安となります。この返済負担率が高いと「返済能力が低い」と判断されてしまいます。
仮に、年収が1,000万円でも年間返済額が500万円であれば、返済負担率が50%と高くなり「返済能力は低い」と判断されます。
逆に、年収300万円でも年間返済額が30万円であれば、返済負担率が10%と低くなり「返済能力は高い」と判断されるでしょう。
おまとめローンの利用者はすでに借り入れが他社にある方が対象になるため、他社の借り入れが少ない人に比べて、結果的に審査結果が厳しくなってしまう一面があるのです。
また、消費者金融のおまとめローンの審査は、「総量規制」も関係します。総量規制とは、「貸金業者は利用者の年収の1/3を超える貸し付けを行なってはならない」という、貸金業法に定められた規則です。
貸金業者が提供するおまとめローンは、利用者の年収の1/3を超えても貸付可能となる「例外貸付」に該当しますが、多額の融資では審査が厳しくなることに変わりありません。
おまとめローンの審査に通らない理由
おまとめローンの審査に通らない理由として、代表的なものを見ていきましょう。
1.収入が少ない
借入金額にもよりますが、収入が多いほど審査は比較的通りやすいことになります。どんなに返済負担率が低くても収入が少なすぎる場合は、返済原資に不安があるため金融機関からの評価は低くなりがちです。
2.借入件数が多い
借入件数が何件から多いとは一概には判断できませんが、一般的には4件以上あると多い傾向です。あまりにも多すぎると、審査が通りにくい原因の一つとなるおそれがあります。
3.属性(転職直後・個人事業主など)
転職直後で勤務歴の浅い方や個人事業主などは、「収入が安定していない」という観点から審査に通りにくい傾向にあるといわれます。
4.過去に延滞した履歴がある
過去に返済が遅れていた履歴が個人信用情報機関にあると、審査が通らない可能性は高くなります。おまとめ対象ローンの返済履行状況が確認できる通帳などを、確認する金融機関もあります。
5.債務整理の履歴がある
個人信用情報機関に、「債務整理」などの履歴が残っている場合には審査は通りません。
個人信用情報機関とは、金融機関へ借り入れする際に、申込み情報や契約内容、支払状況などを登録する信用情報機関(CIC、JICC、KSCなど)のことです。金融事故情報があると、内容によって5~10年間は記録が残る可能性があります。
おまとめローンの審査に通るために事前にやっておきたいポイント
おまとめローンを申込む前にやっておきたいポイントも整理してみましょう。
確認しておきたいポイント
- 現在の借入先の数と借入残高を確認
- 現在の借入先の金利を確認
- 現在の借入先の返済期間
最初に、各借入先の返済予定表や利用明細を確認し、現在利用しているローンの数と合計残高を整理して把握します。
金利や返済期間も必ず把握し、現在利用しているローンよりも金利が高くなったり、返済期間が短くなったりすることがないかを確認しましょう。
承認率を上げるためにやっておきたいポイント
- 他社での延滞実績をなくしておく
- 繰り上げ返済できるものは済ませておく
- 借入件数を絞っておく
- 複数の商品を同時に申込みしない
必ず審査に通る方法という裏技はありませんが、これらは事前にできればやっておきたいポイントです。
おまとめローンに申込みをするときは、氏名・住所・勤務先・年収・他社借り入れ内容などの個人情報を正確に記載しましょう。間違った情報を記載すると、正しい審査が行なわれず、虚偽申告が疑われて申込者の信用度に影響が出るおそれがあります。
また、おまとめローンの申込みをする時点で、他社で遅延や延滞を起こしていると、審査に通過できる可能性が低くなるため注意しましょう。
金融機関の審査は、貸し倒れを防ぐために行なわれるものであり、申込者が延滞や遅延を起こしていると「返済能力が低い」と判断されてしまいます。おまとめローンの利用では、申込前に既存借入の返済を正常にしておくことが大切です。
借入件数が多いのは、審査のうえでマイナスのイメージとなります。そのため、繰り上げ返済できるものは済ませたり、最終返済期限が近いものは完済となるまで待つなど、借入件数を1つでも減らしておくのも良いでしょう。
複数の商品を同時に申込みするのは、「1社への申込みでは資金が足りなかった」というマイナスのイメージを金融機関に与えることにもなりかねないため注意が必要です。
個人信用情報機関では、開示請求により自分で金融事故の履歴を確認することができます。審査に不安がある方は、事前に自分自身の信用情報をチェックすることも検討してください。手数料は1,000円程度必要になりますが、インターネット上で開示請求も行なえます。
もちろん、返済を滞納することなく、日頃から金融機関の信用を高めておくことが、何よりも審査を通りやすくするコツといえます。
おまとめローンの審査に落ちた場合の対処法(おまとめローン以外の方法)
おまとめローンの審査に落ちてしまった場合、他の方法も検討してみましょう。
おまとめローン以外にも、資金使途が自由で他社のローンのおまとめを認めている「フリーローン」と呼ばれる目的別ローンなど、各金融機関によってさまざまな商品があります。
おまとめローンは、一度審査に落ちたとしても再度申込むことは可能です。返済が遅延しないように気を付け、ローンの返済が進み借入件数が減少した段階再度申込むことを検討しましょう。
おまとめローンの審査の必要書類と流れ
審査から契約までの一般的な流れと必要書類について見ていきましょう。
おまとめローンの審査の必要書類
おまとめローンの審査で必要となる書類の一例を紹介します。
- 運転免許証、パスポートなどの本人確認書類
- 収入証明書(源泉徴収票・住民税課税通知書・確定申告書・課税証明書など)
- 他社おまとめ対象ローン関係書類(返済予定表や残高証明書など)
- 銀行の口座番号・銀行印(返済用預金口座)
※金融機関によっては、借り換えの対象となる返済通帳など返済履行状況を確認するものが必要になることがあります。
おまとめローンの申込みから借り入れまでの流れ
申込み方法は、各社とても簡単です。しかし、銀行は仮審査を必要とするところが多く、消費者金融とは審査の流れが若干異なるため、事前によく確認しましょう。
銀行:申込みから借り入れまでの手続きの流れ
1.仮審査の申込み
インターネット・電話・店頭窓口・ファックスなどで簡単に申込みができます。
2.仮審査結果の通知
電話・メールなどで、仮審査の結果が通知されます。
3.本審査(正式な審査)・契約
必要書類を準備して窓口に行きます。来店は一度で済むことが多い傾向です。金融機関によっては、郵送での契約手続きに対応しているところもあります。
インターネット完結型の場合は必要書類をアップロードすれば、来店せずに契約できるところも少なくありません。
4.返済口座の開設
おまとめローンを契約する金融機関の口座を必要とする場合は、返済口座を開設します。口座開設の必要がない場合は、振込先口座の指定が必要です。
5.融資実行・既存契約の返済
おまとめローンを契約する金融機関の口座、または他社の指定した口座に融資が実行されます。融資実行と同時に振り込みを通じて、既存契約のローンを返済するのが一般的です。
消費者金融:申込みから借り入れまでの手続きの流れ
1.申込み・審査
インターネット・自動契約機・電話・店頭窓口などの利用により、簡単に申込みができます。
2.結果の通知
メールや電話などで審査結果が通知されます。消費者金融の審査はスピーディーに行なわれるため、結果が出るまでの時間が比較的短い傾向にあります。
3.契約
必要書類を準備して、郵送・窓口・自動契約機・インターネットなどを通して契約を行ないます。
4.融資実行・既存契約の返済
消費者金融が、契約者名義で複数の既存借入先へ振り込み手続きをし、返済を完了させる方法が一般的です。
おまとめローンを選ぶ際に知っておきたいポイント
ここからは、おまとめローンを選ぶ際のポイントを見ていきましょう。
毎月の返済額が減るか
おまとめローンは、金利や月々の返済額を減らすことで、利用者の負担軽減を目的とする商品です。そのため、商品を選ぶ際は借入条件・金利・返済方法など、商品の特徴をよく理解することが重要といえるでしょう。
加えて、毎月の返済額を減らすためには、申込前にシミュレーションで返済額を把握し、おまとめローンのメリットを得られるかどうかを確認しておくことが大切です。
おまとめローンか借り換えローンか
おまとめローンは複数の借り入れを1本化する商品ですが、借り換えローンは1つの商品を他社の金利の低い商品に乗り換える商品です。
おまとめローンと借り換えローンは、金融機関によっては同じ言葉で使用することもあるため、混同しないように注意しましょう。
おまとめローンを利用する際の注意点
最後に、おまとめローンを利用する際の注意点を2つ解説します。
追加の借り入れができない
おまとめローンは、追加借入のできない商品がほとんどです。もし、冠婚葬祭やケガや病気など、急な出費が発生した場合には、フリーローンやカードローンなど他の商品への申込みが必要になります。今後のライフプランや用途に応じて他の目的別ローンと使い分けをしましょう。
支払総額が増える可能性もある
おまとめローンの商品によっては、複数社から借り入れをしていたときよりも、支払総額が増えてしまう場合があるため注意が必要です。
これは、おまとめローンの金利が他の借り入れの金利よりも高い場合や、おまとめローンの返済期間を長く設定した場合に起こりえます。
例えば、おまとめローンで100万円を金利15%かつ元利均等返済方式で返済する場合、返済期間が異なると以下のように返済総額に違いが出ます。
返済期間 | 返済総額 |
---|---|
1年 | 108万3,094円 |
2年 | 116万3,668円 |
3年 | 124万7,934円 |
4年 | 133万5,856円 |
5年 | 142万7,378円 |
おまとめローンは計画的な返済を心がける
おまとめローンは複数社の借り入れを1本化することで、金利や毎月の返済額の負担軽減が期待できる金融商品です。
審査に落ちないためには、正確な情報の記載や借入件数の削減、支払状況をきれいにしておくことなどが重要になります。
商品内容によっては、契約前よりも返済額が増える可能性もあるため、シミュレーションを活用して毎月の返済額や返済総額を確認しておきましょう。
文/赤上 直紀